※良く折れる場所よりもかなりボディ寄りで折れていて、例2の方法が難しい状況です。 アジャストロッドや指板に影響を与えずにしっかりとした強度を確保できる方法になります。 見た目はそれほどひどく折れていないように見えますが、折れている場所が良くありません。 スカーフジョイントのすぐ上でアジャストロッドにも指板にも干渉する場所です。 中央部分はアジャストロッドまでの空間があり押すとへこんでしまうような状態になっています。 |
折れた箇所を接着します。 へこんでしまう部分はエポキシパテで埋めて整形強度はこのあとの行程で確保するため、この時点では強度よりきれいにつながってることを優先します。 ネック折れにパテは通常使わないのですが、この作業方法の場合、パテ部分は強度には関係なく、費用を抑えるためには非常に有効な手段となります。 |
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強度が必要な部分にスロット(溝)加工します。 左右に入れますが折れ方に合わせて位置と長さ、深さを調整します。 |
メイプル材で溝に合わせた埋木を作り接着します。 ネック強度はこのメイプルの埋木がほぼ負担します。ネックのしなりや振動伝達に関して緒論有るかと思いますが、強度に関しては、メイプル材の強さとマホガニーとメイプルの接着相性などから考えて非常に高い方法になります。 メイプルは音響特性も悪くありません。 この場所でもう一度折れた場合、修復は非常に困難なことを考えると安全で比較的費用が少なく済む方法だと言えます。 |
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埋木を接着、乾燥後にネックの形状に合わせて整形します。 この時点で弦を張っても問題がない強度がありますのでアジャストロッドの効き具合などチェックが可能です |
生地着色である程度色を合わせます。 メイプル材はマホガニーとは色がかなり違うため、この時点である程度合わせることで厚塗り感をある程度押さえることができます。 |
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該当部分の色を濃くして補修部分をわからないようにします。 また、元の塗装からきれいにつながるようにぼかしを入れて塗装のつながる部分も目立たない箇所でつなぎます。 このギターは元の塗装がポリウレタンなので、再塗装部分もウレタンです。 ウレタン塗装ではクリアー塗膜を比較的厚くすることができるため、再塗装部分の艶は元の塗装を上回ります。 |
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メイプル材の埋木による補強はネック形状が折れる前と同じ状態に仕上がります。 修復箇所はほぼ塗りつぶしにはなりますが、美しく仕上がった外観はネック折れを感じさせません。 形状に差違がないため、演奏フィーリングにも違和感はまったくありません。補修部分の色がどうしても濃くなる(ほぼ塗りつぶし)、ラッカー塗装のギターでは経年変化による塗装ヤセで補修部分がわかるようになる事などの欠点もありますが、十分な強度と違和感のない形状、比較的安い費用などのメリットもあります。 補修例1や2で修復が難しい症状にも対応できる点も大きなメリットです。修理費用の目安は、¥43200から¥54000です。 |
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