典厩時
ちょっと前の話になるんだが、長野へ行ったときに典厩時に寄ってきた。武田典厩信繁(武田信玄の弟)のお墓があるお寺である。
この信繁という人、味方はもちろん敵将からも絶賛されていた程の非常に優秀な人物で、とんでも系が多い戦国大名とは違う魅力的な武士だ。
ちなみに典厩というのは、官位で左馬助の唐名。左馬助と言えば明智光秀も同じ官位を名乗っていたわけだが、信繁の典厩は、現代なら職業や役職をカタカナやアルファベット頭文字で表記(CEOとかな)するとか、ちとカッコ良い呼び方みたいな感じか。
周りからこのように呼ばれていた事からも、皆が憧れるようなカッコ良い武将であった事がうかがえる。おそらく武将として優秀だっただけでなく、かなりセンスの良い人だったのであろう。
頭脳明晰で先見の明があり、人望厚く、勇猛かつ沈着冷静と、風林火山そのものと言うような武将の最後はどの様なものだったのであろうか、川中島の戦で討ち死にし、家臣により持ち帰られた首(敵から奪い返したと言われている)をこの寺の井戸で清め、葬ったとされている。
元々寺の名前は鶴巣寺。信繁にちなんで典厩時と改めたらしい。
現在は長野インターのすぐ近く、大きな通りからは外れた千曲川沿いの小さな寺である。
こんなもんもある。日本で一番でかい閻魔像らしいが、そんな事はどうでもイイ。
写真有るから続きも見ろよ
この寺は拝観料というのがある。1人¥200だ。入り口にそれらしき場所はあるんだが完全無人運転中である。
お皿のようなものが置いてあり、すでに¥400置いてある。平日でもたまに人は来るらしい…
まず、典厩信繁の墓石に手を合わせ、寺内を見て回る。かなり小さな寺で5〜10分有ればぐるっと回れるかな。
信繁に興味がなければ来る必要もないと思われる。そんな感じの寺だ。
首清めの井戸
井戸の全景はその辺のブログを検索すれば見られると思うので、これはかなり寄った図。
昔はちゃんと水があって、ここで首を洗ったんだね。すでに枯れてから相当の年数がたっていると思われる井戸の底。
当時は普通の事なのかもしれないが、自分の仕えていた武将の首を洗うはなかなかヘビィな仕事である。
そして、本日のメイン。記念館に展示してある数々のお宝。レプリカではなく全て本物である。
特に兜など武具の類は間近で見るとすごい迫力だ。兜は討ち死に時にかぶっていた物なのだろうか。
今となってはもうどうだったのか定かではないが、飾りの少ない実戦仕様の兜に戦国を感じるね。
実際はもっとたくさんある。特に説明もなく置いてあるだけなんだが、物が物なだけに興奮度100%だ。
しかし、こんな貴重な物を湿度や温度管理もせずに無人展示していて良いのだろうか?
一応展示台には鍵はかかっているが簡単に開けられそうで心配である。
甲陽軍艦の本物なんて滅多に見られる物ではないんだが….
そう、ここの本当の凄い所はその展示方法というか閲覧のさせかたなのだ。
寺の住職は寺敷地内の家に住んでいるのだが、記念館も敷地内でどっちか言うと寺の敷地と言うよりも家の庭なのだ。
実際、記念館閲覧中に記念館前を回覧板をもった近所の人が通過している。
ここから下は、「川中島合戦記念館」の本当に凄い所である。
写真の撮り方を工夫すればそれなりに見える記念館。サイズは小さいが雰囲気はあり、いい感じだ。
普通の家の庭に建っているのがわかるだろうか?
ここに信繁が実際に身につけ戦った本物の兜が置いているのはすごすぎる。
しかも完全無人運転。盗まれたりしないのかと非常に不安になる。
そんな貴重な物の展示を無人で行うなら何か防犯対策をしているだろうと思う人もいるかもしれない。
そうだな、普通はなんか対策するよな。
しかーし、ここはそんな狭い心で作られた物ではない。住職は器の大きな方なのだ。
古いガタガタの海の家ぐらいでしかお目にかかる事ができない年代物の扇風機がシブい。
信繁の兜はこの写真の中央、おそらく開館当時はここに受付の人が居たのであろう、そんな場所に展示されている。極普通の引き戸である。
入り口に手拭いがかかっているが、これは売り物で住職を呼び出せば購入できる。もちろん一枚買ったぞ。
今回のSONIXセールで手拭いを作ったんだが、それはここの影響だ。(´▽`A)
そして完全無人運転の象徴とも言うべき、これ。
完全にセルフである。
手拭いを買うときに住職にいろいろ話を聞いた。
甲陽軍艦の実物現存は三部有るらしく、そのうちの一つがここの物らしい。
寺の物なのであえてみせる必要もないが、どうせなら見たい人に見て貰おうと言う事で記念館を作ったらしい。
最近は歴史ブームで女性(おばさんだけどな)グループの拝観者が多いらしい。歴女と言う言葉が住職から出たときは少々驚いた。意外と新しいものにも精通している。
しかし、あんまり人が来るのも困るらしく、好きな人がときどき来るぐらいで十分だと言っていた。
見た目は普通のおっさんなんだが、利益度外視で大変貴重な物を展示しているこの住職の器のでかさにただただ感服である。
長野に行く機会があったら、是非立ち寄ってもらいたい場所である。