マツダとアウディがロータリーエンジンで提携だと?!
米国の自動車メディア、『INSIDE LINE』が報じているそうだ。ニュースはこれ
『INSIDE LINE』の原文はこちら
要するに、アウディのEV車に小型の発電用ロータリーエンジンを搭載しようと言う計画だな。
ロータリーエンジンはご存じの通り、燃費が悪い。
しかし、これはロータリーエンジンが悪いのではなく、その使い方が悪いのだ。
ロータリーエンジンは低回転域のトルクが少なく、自動車のような重たい物を動かしはじめるためには、ある程度回転を上げ出力を確保した上で減速機(簡単に言えばローギヤ)で調整をして発進するしかない。
どんなエンジンでもこれは一緒なんだが、特に低回転トルクの少ないロータリーはこの状況で燃料をたくさん消費せざるを得ない。
例えばだが、低回転で大きなトルクの出るディーゼルエンジンなら、アクセルなんぞ踏まなくても余裕で発進できてしまうが、ロータリーではそんな事は絶対無理なのだ。
したがって渋滞でもしようもんなら、想像を絶する燃費の悪さになってしまう。
また構造上、バルブが存在しないため、レシプロエンジン(シリンダーとピストンで構成される普通のガソリンエンジンのことだ)お得意のバルブタイミング制御と言う概念はなく、ヘッドを変えるだけで低回転高トルク型とか高回転高出力型とか同型でも仕様変更で対応でき、なんなら制御だけでこれを実現できるレシプロエンジンの様にはいかない。
さらに悪い事に、ロータリーエンジンは高回転で官能的な高出力が得られるため、乗っている人間に抑制が効かず、たいして必要もないのに高回転域に頻繁に突入してしまうことがあげられる。
あたりまえだが、高回転と言うことはそれだけスロットルは開けているわけで、もうバカみたいにガソリンをエンジンにぶち込むことになる….
早い話、ロータリーエンジン車は、そーっと走ることが苦手なのだ。
しかしだ、これはロータリーエンジンが悪いと言うよりも使っている人間に問題がある。
例えばだが、一旦スタートしたもう止まることはほとんど無いような状況で走ったら全然燃費は悪くないのだ。
ル・マンで787Bが勝利したときも燃費に関しては特に問題無く、他車とほぼ同じ出力を燃料規制のある状況で出している。
そのことからもストップ&ゴーを繰り返すような使い方と余分な出力を取出そうとしなければレシプロに対して著しく劣るというようなことはないのである。
ではどうしたら自動車でロータリーエンジンを使って効率良く出力を得られるか?
その答えが今回のニュースの中にある。
アウディのEV車は基本電気自動車である。プリウスのようにガソリンエンジンと電気モーターの両方で走るわけではない。
したがってそこで使われるエンジンは単なる発電機であるため、複雑な制御は要らず補機類もほぼ必要ない。発電に必要な出力を得られれば良いだけだ。
工事現場や野外イベントなどで使われる巨大な発電機ではなく、お祭りの屋台や露店で使われるような小型の発電機を見たことがあると思う。イメージ的にはアレだ。
一定回転でずーっと動いているエンジン、EV車用としてはバッテリー残量が少なくなったら動いて、貯まったら止まる。これだけで良い。
制御は車載CPUがするため、抑制の効かない人間とは違い無駄に回すことは絶対無い。発電機を回すだけなら大トルクも必要なく、一定回転で構わない。
この状況であればロータリーエンジンはけっして燃費が最悪と言うことはなく、むしろサイズあたりの出力はレシプロよりも上だ。
アウディの使おうとしているエンジンが1ローターなのか2ローターなのかよくわからんが、2ローターなら振動はレシプロに対しても有利で音も静かだ。1ローターだった場合はおそらくかなりの振動になるな。
バイクで単気筒エンジンというのがあるが、あんな感じか?
とは言っても、動力用じゃないからな、マウントを工夫してなんとかなるのかもしれん。
と言う事で、発電用にロータリーエンジンを用いた場合、駆動用で発生していたデメリットというのはかなり軽減される。
真面目に研究すればレシプロよりも良い結果が出る可能性(あくまで可能性だがな)だって有るのだ。
あとは、これを開発するだけの資本力、そして実現させるにはそれ相当の気概が必要である。
自動車業界はいずれ世界で10社くらい(資本的にな)になる。日本ではトヨタ、ホンダが残るだけだろう。
アウディはドイツVWグループであり、当然10社に残る側である。
本気出せば資本力的には問題はないだろう。気概に関してはドイツ人がどの程度なのかよくわからんし、ケツまくる可能性もあるが、マツダには十分それがある。
世界中でたった一社だけしか実用域に達しなかったエンジンを作り続けている、有る意味もの凄くバカなメーカーだ。その気概は世界でもトップクラスといって間違いない。
もし、これが実現し、実用にこぎ着けた場合、ロータリーエンジンは新たなステージに向かうことになる。
現在では細々というか、もはや開発とは呼べないレベルでビミョーに製産されているエンジンだが、世界市場に向けて一押しのEV車に載ると言う事になれば、研究開発はかなり高レベルで行われるだろう。
ロータリーエンジンに関する特許類はほぼマツダが持っているので、資本の流れも変わってくるだろうし、当然それによる利益も出るだろう。今のままじゃ利益は出ないからお金もかけられないもんな。
そうなれば、駆動用のロータリーエンジンにも技術のフィードバックができるかもしれないし、細々とでもスポーツカーエンジンとして作り続けていけるかもしれない。
こんな物が車のエンジンとして動いていることがとても不思議に感じるよな。
ペリトロコイド曲線にそってローターが回転し、三組の行程が進行していく。ローター1回転にエキセントリックシャフトが3回転。なんとも不思議な美しい動きだ。
ロータリーエンジンは日本の至宝なのだ。